
有料老人ホームの前払金償却・初期償却・返還金の読み方と、比べ方
有料老人ホームの前払金(入居一時金とも呼ばれます)は、入居のための権利金ではなく、これから住む期間ぶんの家賃を先に預けるお金です。どれだけの期間をかけて使われ、途中で退去したらいくら戻るのか。この仕組みが読めると、前払金の金額だけでは見えない違いが分かります。介護付有料老人ホームを運営する立場から、契約の前に確かめていただきたいことをまとめました。
前払金は「入場料」ではなく「家賃の前払い」

ここが最も誤解されるところです。前払金は、施設に入るための権利金ではありません。これから住む期間ぶんの家賃を、先に預けているお金です。
有料老人ホームの費用は、前払金、毎月の月額利用料(管理費・食費など)、介護保険の自己負担の3つでできています。このうち介護保険の自己負担は、要介護度とご負担割合で決まるため、どのホームでもほぼ同じです。ホームによる差が大きいのは前払金と月額利用料で、とくに前払金は、次にご説明する仕組みを知らないと正しく比べられません。
種類ごとの費用の相場や月額費用の内訳は、東急ウェルネスの老人ホーム紹介サービス「住まいる」のコラム老人ホームの費用相場と内訳でご説明しています。
償却と想定居住期間
預けた前払金は、住んだ月数のぶんだけ少しずつ「使われて」いきます。これを償却といいます。何年かけて使い切る設計かを示すのが想定居住期間で、多くのホームで5〜7年程度に設定されています。ご入居時の年齢によって想定居住期間を変えているホームもあります。
想定居住期間より早く退去した場合は、まだ使われていない分(未償却分)が返ってきます。逆に、想定居住期間を過ぎても、家賃を追加で請求されることはありません。前払金は、長く住まわれた場合の家賃の負担をホーム側が引き受ける仕組みでもあります。
期間の長さを表す図ではありません。想定居住期間や初期償却の割合は、重要事項説明書で確かめてください。
初期償却に注意する
多くのホームでは、前払金の一部を初期償却として、入居期間にかかわらず返還しない扱いにしています。割合はホームによって違い、0%のところもあれば、20%や30%のところもあります。想定居住期間を超えて長く住まわれる場合に備えて受け取る部分、と説明されることが多いお金です。
前払金の金額だけを見て「こちらが安い」と判断すると、途中で退去したときに差が出ます。比べるときは、前払金・想定居住期間・初期償却の割合を3つセットで見てください。いずれも重要事項説明書に書かれています。
返還金は自分で計算できる
途中で退去したときに戻るお金(返還金)の考え方は、多くのホームで次のとおりです。
返還金 =(前払金 − 初期償却の額)×(想定居住期間の残り ÷ 想定居住期間)
たとえば、前払金2,000万円・初期償却20%・想定居住期間6年のホームで、2年で退去した場合を考えてみます。初期償却の400万円は戻りません。残りの1,600万円が6年で償却されるので、2年ぶんの約533万円が使われ、返ってくるのは約1,067万円です。
| 退去の時期 | 初期償却0%のとき | 初期償却20%のとき |
|---|---|---|
| 1年 | 約1,667万円 | 約1,333万円 |
| 2年 | 約1,333万円 | 約1,067万円 |
| 3年 | 1,000万円 | 800万円 |
| 4年 | 約667万円 | 約533万円 |
| 5年 | 約333万円 | 約267万円 |
| 6年以降 | 0円 | 0円 |
※ 前払金2,000万円・想定居住期間6年で、年単位に均等に償却するとした場合の目安です。実際は月単位や日割りで計算するホームが多く、計算式はホームごとに重要事項説明書と契約書に書かれています。
※ 初期償却分を除いた額が、想定居住期間をかけて年単位に均等に償却されるとした場合の目安です。金額にしたときの例は、下の表のとおりです。
表のとおり、初期償却の割合の違いは、早い時期に退去するほど金額の差になって表れます。入院や、より医療の手厚い施設への住み替えなど、想定より早く退去する可能性も考えて比べておくと安心です。
3か月以内の解約と、前払金の保全
前払金については、ご入居者を守るためのルールが法律(老人福祉法)で定められています。
入居から3か月以内の解約(短期解約特例)
入居から3か月以内に契約が終わった場合は、初期償却の有無にかかわらず、実際に住んだ期間の家賃などを差し引いた前払金が返還されます。「90日ルール」とも呼ばれます。
前払金の保全措置
前払金を受け取るホームは、万一ホームの運営が続けられなくなった場合に備えて、返還金の支払いを保証する措置(銀行の保証や保険など)をとることが義務づけられています。保全される額は、返還すべき額と500万円のうち、いずれか低い額です。どの方法で保全しているかは、重要事項説明書で確認できます。
前払いか月払いかは「何年住むか」で考える
多くのホームが、家賃相当額を全額前払いするプラン、半分を前払いするプラン、全額を月払いにするプランのように、払い方の違う料金プランを用意しています。
考え方はシンプルで、想定居住期間より長く住むなら前払いが有利、短ければ月払いが有利になりやすい、というのが原則です。ただし、手元に資金を残しておきたい、相続を考えたい、といった事情もあります。総額だけでは決まりませんので、ご家族とも相談して選んでください。
契約の前に確かめたいこと
- 前払金の金額と、ご自身の年齢での想定居住期間
- 初期償却の割合と、その理由
- 途中で退去したときの返還金の計算式(月単位か日割りか)
- 3か月以内に解約した場合の扱い
- 前払金の保全措置の方法
- 月額利用料に含まれるもの、別にかかるもの
パンフレットの金額は、多くの場合「ご入居時◯歳の場合」といった前提つきのモデルケースです。候補が絞れたら、ご本人の年齢と要介護度で見積もりを出してもらい、あわせて何年目に退去したらいくら戻るかも確認しておくと安心です。ホームの選び方全体は老人ホームの選び方・探し方でご説明しています。
東急ウェリナケアの場合
3ホームとも、家賃相当額の払い方を、全額を前払金でお預かりするAプラン、半額を前払金でお預かりするBプラン、全額を毎月お支払いいただくCプランからお選びいただけます(旗の台と自由が丘のAプラン・Bプランは80歳以上の方)。
想定居住期間は、ご入居時のご年齢によって4年から9年です(9年は尾山台の75歳以下のみ。85歳〜88歳は3ホームとも6年)。初期償却は、旗の台と自由が丘が前払金の15%、尾山台は0%です。
たとえば85歳でAプランを選ばれ、2年でご退去された場合、年単位で均等に償却するとした目安では、尾山台(前払金2,088.0万円)は約1,392万円、旗の台(前払金2,448万円)は約1,387万円が返還の対象になります。実際の返還額は、重要事項説明書に定める計算式で算出します。
料金は、旗の台が2025年10月1日時点、自由が丘・尾山台が2025年11月1日時点のものです。仕組みの詳しい説明は東急ウェリナケアの費用で、ご年齢やプランを選んだ試算は費用シミュレーションでご覧いただけます。重要事項説明書は、各ホームの概要ページ(旗の台・自由が丘・尾山台)からご覧いただけます。


