椅子に座り、職員と一緒に体操をする高齢の方たち

パタカラ体操のやり方と効果ほかの口腔体操と、
高齢者の口腔ケア

「パ・タ・カ・ラ」と声に出して、唇と舌を動かす「パタカラ体操」。食べる、飲み込む、話すといった口の働きを保つための体操として、歯科医師会や自治体が紹介しています。パタカラ体操のやり方と回数の目安、4つの音がそれぞれ口のどこを使うのかを、日本歯科医師会などの資料をもとにまとめました。舌や頬の体操、唾液腺マッサージなどのほかの口腔体操もご紹介します。あわせて、歯みがきや入れ歯の手入れといった口腔ケアの基本と、口のケアと誤嚥性肺炎の関係をご説明します。介護付き有料老人ホームの口腔ケアの決まりと、東急ウェリナケアの3ホームの口のケアもご覧ください。

1|パタカラ体操とは

パタカラ体操は、「パ」「タ」「カ」「ラ」の4つの音を、はっきりと声に出してくり返す口の体操です。日本歯科医師会は、口の働きの衰え(オーラルフレイル)の対策として、口と舌の動きをなめらかにする体操に挙げています。

大阪府歯科医師会は、パタカラ体操を「摂食嚥下の機能向上を目的として行います」と説明しています。摂食嚥下(せっしょくえんげ)とは、食べ物を口に取り込み、かんで、飲み込むまでの一連の働きのことです。道具が要らず、椅子に座ったままでもできるのが特長です。

4つの音は、それぞれ口の違う場所を使います。

音口の動き食べるときの
役割
パ唇をしっかり閉じてから、はじくように発音する食べ物を口に取り込み、食べこぼしを防ぐ
タ舌先を、上の前歯の裏につけるように発音する舌で食べ物を動かし、のどへ送る
カ舌の奥を上あごの奥につけ、のどの奥を閉じるように発音する飲み込むときに、のどの奥を閉じる。食べ物が気管に入るのを防ぐ
ラ舌を丸めて、舌先を上の前歯の裏につけるように発音する舌で食べ物をまとめ、のどへ送る

※ 日本歯科医師会「オーラルフレイル対策のための口腔体操」と、大阪府歯科医師会「お口の働きを高める体操」をもとに、東急ウェリナケア編集部がまとめました。

2|パタカラ体操のやり方と、回数・時間の目安とコツ

マイクを持って歌う高齢の男性と、となりで笑顔の高齢の女性
※写真はイメージです

椅子に腰かけるなど、楽な姿勢で始めます。大阪府歯科医師会は、口の体操の前に、首や肩をほぐす「食前体操」を取り入れると効果的だとしています。

準備:首と肩をほぐす

  • ① 口をすぼめて、息をしっかり吐き出します。吐き切ると、自然に息を吸えます。
  • ② 首をゆっくり回します。首が痛む方や回しにくい方は、この動きを省きます。
  • ③ 肩を、ゆっくり上げ下げします。
  • ④ 両手を頭の上で組み、上半身を左右に倒して、わき腹を伸ばします。
  • ⑤ 最後に、深呼吸を1回します。

パタカラ体操の手順

日本歯科医師会が紹介しているやり方は、次のとおりです。

  • ①「パ」:唇をはじくように、「パパパパ…」と8回
  • ②「タ」:舌先を上の前歯の裏につけるように、「タタタタ…」と8回
  • ③「カ」:舌の奥を上あごの奥につけるように、「カカカカ…」と8回
  • ④「ラ」:舌を丸めるように、「ラララ…」と8回

①〜④を、2セット行います(日本歯科医師会「各発音8回を2セット」)。

回数は、資料によって少しずつ違います。たとえば江戸川区の「新えどがわ健口体操」は、それぞれの音を7回ずつくり返します。最後に「パタカラ」と続けて言いながら、手をたたいてリズムをとる形も紹介しています。決まった回数にこだわるより、疲れない範囲で毎日続けることが大切です。

厚生労働省の「介護予防マニュアル(第4版)」には、介護予防の教室で口腔体操を5分ほど行う例が載っています。5分ほどなら、準備の体操やほかの口腔体操(4章)と組み合わせても、無理なく続けられます。

食事の前に行う理由

大阪府歯科医師会は、パタカラ体操には「唾液が出やすくなる効果もあります」としています。唾液は口の中を潤すだけでなく、食べ物をひとかたまりにして飲み込みやすくし、入れ歯を安定させる働きもあります(同)。

同会は、首や肩をほぐす食前体操も、食事の前に行うと、すっきり目覚めて安全に食事をする手助けになるとしています。口の体操は、食事の前の「口の準備運動」として行うと、毎日の習慣にしやすくなります。

無理なく続けるために

  • 大きな声で、はっきり:一音ずつ、口を大きく動かします。声を出しにくい場所では、口の動きだけでも行えます(江戸川区)。
  • 慣れたら早口言葉も:「なまむぎ なまごめ なまたまご」などの早口言葉です。日本歯科医師会が、滑舌をよくする体操として紹介しています。
  • 毎日、同じ時間に:食事の前など、時間を決めると続けやすくなります。続けるコツは、高齢者の体操にもまとめています。
  • 痛みやむせがあれば休む:あごや首に痛みが出たとき、むせが続くときは、体操を休んで、医師や歯科医師に相談します。

すでに飲み込みにくさがある方や、食事のたびにむせる方もいます。その場合は、体操を始める前に、どの体操が合うかを主治医や歯科医師、言語聴覚士に相談すると安心です。

3|パタカラ体操の効果:かむ力・飲み込む力・話す力

日本歯科医師会は、口と舌の体操で唇や頬、舌の筋力が上がると、口の働きが高まり、唾液がよく出るとしています。舌がなめらかに動いて食べ物を飲み込みやすくなり、表情もいきいきしてくるとしています。

資料の説明をもとにすると、パタカラ体操には、次のような働きが期待されています。

  • かむ・取り込む:唇を閉じる力が、食べ物の取り込みと、食べこぼしの防止につながる(パ)
  • 飲み込む:舌で食べ物をまとめてのどへ送り、飲み込むときにのどの奥を閉じる動きにつながる(タ・カ・ラ)
  • 話す:唇と舌を速く、正確に動かす練習になり、はっきりした発音につながる
  • 唾液:口と舌を動かすことで、唾液が出やすくなる

「パ」「タ」「カ」の音は、口の動きを調べる検査にも使われています。5秒か10秒の間に、それぞれの音をできるだけ速くくり返し、1秒あたりの回数を数えます。「オーラルディアドコキネシス」という検査です(厚生労働省「介護予防マニュアル(第4版)」)。日本老年歯科医学会は、この検査を、舌と唇の動き(滑舌)の衰えを調べる方法としています。

ただし、パタカラ体操だけで、かむ力や飲み込む力を必ず保てる、誤嚥性肺炎を防げる、と言い切れるわけではありません。効き方には個人差があります。歯みがきなどの口腔ケア、歯科での治療や入れ歯の調整、食べる力に合わせた食事の形の工夫と組み合わせることが大切です。食事の形は、介護食の種類にまとめています。

4|パタカラ体操と組み合わせたい、ほかの口腔体操

日本歯科医師会、8020推進財団、大阪府歯科医師会などは、パタカラ体操のほかにも、次のような口の体操を紹介しています。パタカラ体操と組み合わせて、できるものから取り入れてみてください。

口と頬の体操

  • 口をすぼめてから、「イー」と横に大きく開きます(日本歯科医師会)。
  • 頬をふくらませてから、すぼめます。これを数回くり返します(同)。
  • ぶくぶくうがい:水を使わずに、空気で頬をふくらませて「ぶくぶく」と動かします。両頬で10回、右頬だけで10回、左頬だけで10回、最後に両頬で勢いよく10回です(大阪府歯科医師会)。
  • あいうべ体操:「あー」「いー」「うー」「べー」と、口を大げさに動かします。「べー」では、舌をあご先まで伸ばす気持ちで出します。あごの関節が動きにくい方は、負担の少ない「い」「う」から始めます(大阪府歯科医師会)。

舌の体操

  • 舌を伸ばす・回す:舌で下あごの先をさわるつもりで伸ばし、次に鼻の頭をさわるつもりで伸ばします。続けて舌を左右に伸ばし、最後に口の周りをぐるりとなめるように回します(日本歯科医師会)。大阪府歯科医師会は、右回りと左回りを3回ずつ、無理のない範囲で、としています。
  • 舌で押す(舌圧訓練):舌を頬の内側に強く押しつけ、頬の外から指で舌先を押さえます。指に押し返すように、舌をゆっくり10回押しつけます。反対の頬でも同じように行います(日本歯科医師会)。

唾液腺マッサージ

唾液をつくる大きな唾液腺は、耳の前、あごの骨の内側、あご先の内側の3か所にあります。東京都は、唾液腺マッサージには、唾液の分泌を促す働きがあるとしています。飲み込む働きや消化、口の中を自然にきれいにする働きを保つことも期待できるとしています。

  • ① 耳下腺(じかせん):耳の前の、上の奥歯のあたりに指を数本当て、円を描くように10回ほどマッサージします。
  • ② 顎下腺(がっかせん):あごの骨の内側のやわらかいくぼみを、3〜4か所、順に押します。1か所につき5回ほどが目安です。
  • ③ 舌下腺(ぜっかせん):あご先の内側のやわらかい部分に、両手の親指をそろえて当てます。上に向かって、10回ほどゆっくり押します。

※ 日本歯科医師会の手順です。大阪府歯科医師会は、力を入れすぎず、やさしく押すように勧めています。

首と肩の体操

首や肩の周りには、飲み込むときに大切な筋肉がついています(大阪府歯科医師会)。2章の準備の体操のほか、8020推進財団の「かみかみ百歳体操」にも、首のストレッチがあります。首をゆっくり後ろへ振り返る、左右に傾ける、前に倒す、といった動きを、それぞれ10秒ほど行います。肩をゆっくり上げて下ろす運動も組み合わせます。首に持病や痛みのある方は、医師に相談してから行います。

飲み込む力をつける体操

  • 開口訓練:ゆっくり大きく口を開けて10秒保ち、しっかり口を閉じて10秒休みます。8020推進財団は、これを2セット、朝と夕方に行う目安を示しています。口は、痛みが出ない範囲で開けます。
  • ごっくん体操:のどぼとけに手を当て、あごを少し引いて、ゴクッと飲み込みます。のどぼとけを上げたまま5秒保ち、最後に息をしっかり吐き出します。5秒が難しければ、できる長さで行います(日本歯科医師会)。

こうした飲み込みのための体操は「嚥下体操」とも呼ばれます。飲み込みに不安がある方は、どの体操が合うかを、言語聴覚士などに相談すると安心です。言語聴覚士は、話すことや飲み込むことの訓練を専門にする職種です(老人ホームのリハビリ(機能訓練))。

※ 写真はイメージです。

5|高齢者の口腔ケア:歯みがき・入れ歯・舌・保湿

口腔ケアは、口の中を清潔に保ち、口の働きを保つためのケアです。厚生労働省の「介護予防マニュアル」は、口の機能を高める支援の柱として、次の3つを挙げています。

  • ① 口の機能を高めることの大切さを知る
  • ② 口の清掃(歯みがきや入れ歯の手入れ)を、自分でできるように支える
  • ③ 食べる・飲み込む働きを高める(口腔体操など)

パタカラ体操などの口腔体操は③にあたり、この章でご紹介する歯みがきや入れ歯の手入れは②にあたります。日本歯科医師会のサイトの解説は、生活に手伝いが必要になったら、口のケアにも手伝いが要ると考えるよう勧めています。

歯みがき

歯や入れ歯、口の粘膜には、細菌のかたまり(バイオフィルム)がねばりついています。日本歯科医師会のサイトの解説によると、バイオフィルムはうがいだけでは壊せず、歯ブラシなどでこすって壊す必要があります。

高齢の方の口の粘膜は薄く、傷つきやすくなっています。力を入れすぎずに、やさしくみがきます(健康長寿ネット)。8020推進財団は、食事のあとに歯をみがくことを勧めています。歯と歯のあいだは、デンタルフロスや歯間ブラシも使います(同)。

入れ歯の手入れ

入れ歯は汚れがつきやすく、細菌が増えやすい場所です(国立長寿医療研究センター)。日本歯科衛生士会の資料をもとに、手入れの流れをまとめました。

  • 食事のあと:入れ歯を外して、ブラシでしっかりこすり洗いし、水で流します。
  • 寝る前:入れ歯を外してこすり洗いし、水を入れた入れ歯ケースに、入れ歯洗浄剤を入れて保管します。夜は、歯ぐきを休めるためにも外しておきます。
  • 朝:流水でしっかり洗ってから、つけます。
  • みがくもの:こすり洗いは、ブラシと水で行います。みがき剤を使うときは、研磨剤を含まない入れ歯専用の歯みがき剤を選びます。
  • 保管:入れ歯は乾くと、ゆがんだり、形が変わったりします。外したら、水を入れた入れ歯ケースに入れます。
  • 入れ歯安定剤:入れ歯がゆるいときなどに、一時的に使うものです。なるべく早く歯科医院で診てもらいます。

※ 入れ歯の種類や口の状態によって、手入れの方法が違うことがあります。歯科医師や歯科衛生士から指示があるときは、その方法で手入れします。

舌の清掃

舌の表面につく白っぽい汚れ(舌苔)は、細菌のすみかになり、口のにおいの原因にもなります(国立長寿医療研究センター)。健康長寿ネットは、舌の奥から手前へ、10回くらい軽くこすって清掃する方法を紹介しています。舌は傷つきやすいので、やわらかいブラシを使い、力を入れずに行います。

口の乾燥と保湿

口が乾くと、汚れが粘膜にこびりつきやすくなり、食べ物もまとまりにくくなります。乾きが気になるときは、唾液腺マッサージ(4章)のほか、口腔ケア用の保湿剤を使う方法があります。国立長寿医療研究センターは、口の中全体と唇に、口腔ケア用のジェルを薄く塗って保湿する方法を紹介しています。乾きが続くときは、歯科医師や医師に相談します。

家族が手伝うときの注意

  • 姿勢:座った姿勢が理想です。難しいときは横向きに寝た姿勢にし、体に麻痺がある方は、麻痺のない側を下にします(健康長寿ネット)。あごを軽く引くと、水分がのどへ流れ込みにくくなります(日本歯科医師会)。
  • 水は少なめに:飲み込む力が弱い方は、口に水をためておくのが苦手です。水が多いと、のどへ流れて誤嚥することがあります。スポンジブラシなどは、水をよくしぼって使います(日本歯科医師会)。
  • 汚れは口の外へ:歯ブラシはこまめにコップの水ですすぎ、きれいな状態で口に戻します。口腔ケア用のウエットティッシュなどで、粘膜の汚れをふき取りながら行います。うがいができない方にも向いた方法です(日本歯科医師会)。
  • できることはご本人に:自分でみがける部分は、ご本人にみがいてもらいます。届かないところを仕上げる形にすると、口の清掃の自立を支えられます。
  • 声をかけてから:始める前に、これから何をするかを伝え、ご本人のペースに合わせて進めます。
  • 気になることは歯科へ:歯ぐきの腫れや出血、口の中の痛み、入れ歯が合わないときは、歯科医師に相談します。通院が難しい方には、歯科医師が自宅や施設を訪ねる訪問歯科診療もあります。

※ 写真はイメージです。

6|口のケアと誤嚥性肺炎:研究でわかっていること

食べ物や飲み物、唾液などが、食道ではなく気管に入ることを「誤嚥(ごえん)」といいます。誤嚥がもとで起こる肺炎が「誤嚥性肺炎」です。2025年の人口動態統計(確定数)では、誤嚥性肺炎で亡くなった方は64,396人で、死因の第6位でした。誤嚥性肺炎とは別に数える「肺炎」は、84,021人で第5位でした。

日本歯科医師会のサイトの解説は、肺炎が起こるしくみに、3つのことが関わるとしています。「口やノドの中の細菌」「誤嚥」「体の抵抗力」です。口の中に細菌が多いと、誤嚥したときに、細菌も一緒に肺へ入りやすくなります。

口のケアと肺炎の関係を調べた研究で、よく知られているのが、日本の11か所の老人ホームでの研究です(2002年に発表)。歯科医師や歯科衛生士が関わって口腔ケアを積極的に行ったグループと、それまでどおりのグループを比べました。その結果、口腔ケアを積極的に行ったグループでは、25か月の間に、肺炎の発生率が40%低くなりました。肺炎で亡くなった方の数も、50%少なかったと報告されています(日本歯科医師会のサイトの解説)。

一方、2022年のコクラン・レビューは、高齢者施設での6つの研究(6,244人)を調べました。コクラン・レビューは、複数の研究を集めて評価する報告です。歯科の専門職による口腔ケアが、ふだんの口腔ケアに比べて肺炎の発症を減らすかどうかは、はっきりしないとしています。肺炎による死亡は減る可能性があるものの、根拠の確かさは低いとしています。

口のケアは、肺炎を防ぐ手立てのひとつとして期待されていますが、それだけで防げるわけではありません。食事のときの姿勢や食べ物の形、体の抵抗力なども関わります。むせや微熱が続くなど、気になる変化があるときは、早めに医師に相談します。

7|オーラルフレイル:5つの質問でチェックする

「オーラルフレイル」は、口の機能が健やかな状態(いわゆる「健口」)と、口の機能が低下した状態とのあいだにある状態です。2024年4月1日に、関係する3つの学会が合同ステートメントを出し、考え方と確かめ方を示しました。日本老年医学会・日本老年歯科医学会・日本サルコペニア・フレイル学会です。

日本老年歯科医学会は、オーラルフレイルにあたると、将来のリスクが高いとしています。フレイル(心身の活力が落ちた状態)や要介護認定、死亡のリスクです。一方で、早めに気づいて対策を行えば、衰えをゆるやかにし、改善できる可能性があるとしています。

次の5つの質問(OF-5)のうち、2つ以上が当てはまると、オーラルフレイルにあたります。

項目質問当てはまる
答え
① 歯の数自分の歯は、何本ありますか(さし歯や金属をかぶせた歯は自分の歯に数え、インプラントは数えません)0〜19本
② かむ力半年前と比べて、固いものが食べにくくなりましたかはい
③ むせお茶や汁物などで、むせることがありますかはい
④ 口の渇き口の渇きが気になりますかはい
⑤ 滑舌ふだんの会話で、言葉をはっきりと発音できないことがありますかはい

※ 日本老年歯科医学会のサイトに掲載されている OF-5 をもとにしています(出典:オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント)。

当てはまったときは、かかりつけの歯科医師や医師に相談しましょう。体の衰え(フレイル)全体のチェックと予防は、東急ウェルネスの紹介サイト「住まいる」のフレイルとはで解説しています。

8|老人ホームの口腔ケア:国の決まりと、選び方

介護付き有料老人ホーム(介護保険の「特定施設入居者生活介護」)では、2024年度に口腔ケアの決まりが変わりました。国の基準に、第185条の2「口腔衛生の管理」が新しくできました。ホームは、口腔衛生の管理体制を整え、一人ひとりの状態に応じた口のケアを、計画的に行うこととされています。

国の通知は、具体的に次のことを求めています。

  • 歯科医師、または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、ホームの介護職員に、口腔ケアの技術的な助言と指導を年2回以上行う
  • その助言と指導をもとに、入居者の口腔ケアの体制についての計画を作り、必要に応じて見直す

それまでは、こうした取り組みを行うホームが算定できる「口腔衛生管理体制加算」(月30単位)がありました。2024年度にこの加算は廃止され、すべてのホームが行う基本のサービスになりました。ただし3年間の経過措置があり、2027年3月31日までは努力義務です。

項目介護付き特養・老健
など
国の基準第185条の2(2024年4月に新設)第17条の3など(2021年4月に新設)
義務に
なる時期
2027年4月から(それまでは努力義務)2024年4月から
歯科職の
助言・指導
介護職員へ、年2回以上介護職員へ、年2回以上
口の状態
の評価
通知に定めはありません入所時と、その後おおむね月1回(2024年度から)

※ 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(第185条の2)、指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(第17条の3)、各基準の解釈通知と、厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」をもとに、東急ウェリナケア編集部がまとめました。特養は特別養護老人ホーム、老健は介護老人保健施設です。

国の基準は、協力歯科医療機関を前もって定めておくよう努めることも、ホームに求めています(第191条第7項)。協力歯科医療機関の名前と協力の内容は、ホームの重要事項説明書で確かめられます。

入居前に確かめたいこと

  • 口腔ケアの回数とやり方。毎食後か、寝る前か。自分でできる部分を、どこまで任せてもらえるか。
  • 入れ歯の扱い。夜は誰が外して、どこで保管するか。洗浄剤や歯ブラシなどの用品の費用は、自分で負担するか。
  • 歯科との連携。協力歯科医療機関があるか。通院が難しいときに、ホームで歯科の診療を受けられるか。
  • 口の体操。パタカラ体操などの口腔体操や、飲み込みの体操を行っているか。どのくらいの頻度か。
  • 食事の形。かむ力や飲み込む力に合わせて、食事の形を変えられるか。

医療機関との連携の確かめ方は、医療ケアが必要な方の老人ホーム選びに、食事の形は介護食の種類にまとめています。

東急ウェリナケアの場合

旗の台・自由が丘・尾山台の3ホームとも、重要事項説明書で「口腔衛生管理サービス」を「あり」としています。各ホームの介護・看護のページで、1日の過ごし方の一例をご紹介しています。朝食と昼食のあと、就寝の準備のときに、口腔ケアのお手伝いをしています。時間や内容は、ケアプランによって違います。

リビングで、両腕を上げて体操をするご入居者
毎日行う嚥下体操(尾山台のサービスのページより)
  • 歯科との連携:3ホームとも協力歯科医療機関を定めています。通院が難しい方への訪問歯科診療や口腔ケアの指導などで、協力を受けています(重要事項説明書、2026年10月1日時点)。
  • 自由が丘:提携する訪問歯科(デンタルオフィス桜新町)が、むし歯や歯周病の治療、口腔ケア、飲み込みのリハビリを行います。24時間365日の緊急往診にも対応します(自由が丘の介護・看護のページ)。リハビリ体操や口腔体操などのアクティビティも、定期的に行っています(ウェリナケアVoice Vol.04、掲載時の内容)。
  • 尾山台:飲み込みのための嚥下体操を毎日行っています(尾山台のサービスのページ)。
  • 動画で体操:東急ウェルネスのオリジナル体操「東急ウェルネス健康体操」の動画は、高齢者の体操でご覧いただけます。座ったまま行う座位と、立って行う立位があります。

口のケアや、飲み込み、入れ歯のことで気になることは、見学やご相談のときにお知らせください。ご相談は、お電話(旗の台 0120-068-109・自由が丘 0120-335-109・尾山台 0120-626-109。いずれも受付10:00〜17:30・無休)か、資料請求・見学予約のフォーム(旗の台・自由が丘・尾山台)から承ります。医療機関との連携は、各ホームの介護・看護のページ(旗の台・自由が丘・尾山台)でご覧いただけます。

よくあるご質問

Qパタカラ体操とは、どんな体操ですか。

A「パ」「タ」「カ」「ラ」の4つの音を、はっきりと声に出してくり返す口の体操です。パは唇、タは舌先、カは舌の奥、ラは舌を丸める動きを使います。食べる、飲み込む、話すといった口の働きを保つための体操として、歯科医師会や自治体が紹介しています。

Qパタカラ体操は、1日に何回くらい行えばよいですか。

A日本歯科医師会は、それぞれの音を8回ずつ発音し、これを2セット行うやり方を紹介しています。回数は資料によって少しずつ違い、江戸川区の健口体操は7回ずつです。決まった回数にこだわるより、疲れない範囲で、毎日続けることが大切です。

Qパタカラ体操は、いつ行うのがよいですか。

A食事の前がおすすめです。大阪府歯科医師会は、パタカラ体操には唾液が出やすくなる効果もあるとしています。首や肩をほぐす体操も、食事の前に行うと、安全に食事をする手助けになるとしています。毎日、時間を決めて行うと続けやすくなります。

Qパタカラ体操には、どんな効果がありますか。

A唇や舌の筋力が上がって口の働きが高まり、唾液がよく出て、食べ物を飲み込みやすくなると説明されています(日本歯科医師会)。ただし、体操だけで誤嚥性肺炎を防げるとは言い切れません。歯みがきなどの口腔ケアや、歯科の受診と組み合わせることが大切です。

Qパタカラ体操で、気をつけることはありますか。

A楽な姿勢で、疲れない範囲で行います。あごや首に痛みが出たとき、むせが続くときは休んで、医師や歯科医師に相談します。すでに飲み込みにくさがある方は、始める前に、主治医や歯科医師、言語聴覚士に、どの体操が合うかを相談すると安心です。

Qパタカラ体操のほかに、どんな口腔体操がありますか。

A口をすぼめて横に開く体操、頬をふくらませる体操、あいうべ体操、舌を伸ばしたり回したりする体操などがあります。耳の前やあごの下を押す唾液腺マッサージ、首や肩のストレッチ、口を大きく開けて保つ開口訓練もあります。日本歯科医師会や8020推進財団などが紹介しています。

Q入れ歯は、どのように手入れすればよいですか。

A食事のあとと寝る前に外して、ブラシでこすり洗いします。歯みがき剤を使うときは、研磨剤を含まない入れ歯専用のものを選びます。寝るときは、水を入れた入れ歯ケースに洗浄剤を入れて保管し、朝に流水で洗ってからつけます。入れ歯は乾くと形が変わるため、外したら水に入れておきます。

Qうがいができない人の口腔ケアは、どうすればよいですか。

A水は少なめにし、スポンジブラシなどはよくしぼって使います。歯ブラシはこまめにすすぎ、口腔ケア用のウエットティッシュなどで汚れをふき取りながら行います。あごを軽く引いた姿勢にすると、水分がのどへ流れ込みにくくなります。難しいときは、歯科医師や歯科衛生士に相談します。

Qオーラルフレイルは、どうやって確かめればよいですか。

A2024年に3つの学会が示した5つの質問(OF-5)で確かめられます。①自分の歯が19本以下、②固いものが食べにくくなった、③お茶や汁物でむせる、④口の渇きが気になる、⑤言葉をはっきり発音できないことがある。このうち2つ以上が当てはまると、オーラルフレイルにあたります。

Q東急ウェリナケアでは、口のケアをどのように行っていますか。

A3ホームとも、朝食と昼食のあと、就寝の準備のときに口腔ケアのお手伝いをしています(1日の過ごし方の一例)。協力歯科医療機関による訪問歯科の協力も受けています。尾山台では嚥下体操を毎日行い、自由が丘では提携の訪問歯科が24時間365日の緊急往診に対応します。

出典と確認日

この記事の内容は、2026年11月6日に、次の資料で確認しました。

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