
高齢者の体操椅子に座ってできる体操と、運動の目安・続けるコツ
年齢を重ねると、筋肉の量や体力は少しずつ落ちていきます。国の調査では、介護が必要になった主な原因の3番目が「骨折・転倒」でした。体操は、特別な道具や場所がなくても、椅子ひとつで今日から始められる運動です。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」をもとに、高齢の方の運動の目安、椅子に座ってできる体操と立ってできる体操、安全に行うための注意、続けるコツを整理しました。慈恵医大リハビリテーション科の安保雅博教授が監修した「東急ウェルネス健康体操」の動画も、あわせてご覧いただけます。
1|高齢の方に体操がすすめられる理由
体を動かす機会が減ると、筋肉が落ち、歩く力やバランスが弱くなります。すると外に出るのがおっくうになり、さらに動かなくなる、という悪い循環が起きやすくなります。高齢の方の体と心の働きについては、次のような言葉で説明されます。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| フレイル | 年をとって、体の力や心の働き、人とのつながりが弱くなり、介護が必要な状態や病気になりやすくなっている状態。適切な対応で、健康な状態に戻りうるとされている |
| サルコペニア | 年をとるとともに、筋肉の量が減り、筋力が落ちた状態 |
| ロコモティブ シンドローム | 骨・関節・筋肉などの運動器の障害のために、立つ・歩くといった移動の力が落ちた状態 |
※ フレイルは日本老年医学会のステートメント(2014年)、サルコペニアは日本サルコペニア・フレイル学会、ロコモティブシンドロームは日本整形外科学会の説明を、やさしい言葉に言いかえています。
国の調査(2025年 国民生活基礎調査)では、介護が必要になった主な原因は、多い順に認知症(16.7%)、高齢による衰弱(15.6%)、骨折・転倒(14.6%)でした。要支援の方に限ると、高齢による衰弱(17.7%)、関節疾患(14.8%)、骨折・転倒(14.7%)の順で、体の衰えに関わる原因が上位に並びます。
転倒は、命にも関わります。2025年に「転倒・転落・墜落」で亡くなった65歳以上の方は11,299人で、同じ年に交通事故で亡くなった65歳以上の方(2,019人)の5倍以上でした(人口動態統計をもとに編集部で集計)。東京消防庁の管内では、2024年に日常生活の事故で救急搬送された高齢者98,056人のうち、73,500人が「ころぶ」事故で、その約4割が入院の必要な中等症以上でした。「ころぶ」事故が起きた場所は、住宅などでは9割以上が屋内です。
体操は、筋力やバランスの衰えをゆるやかにするために、毎日の暮らしの中で、今日から始められることのひとつです。
2|どのくらい体を動かせばよいか(国の目安)

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢の方に向けて、次の目安を示しています。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 体を動かす量 | 歩行、またはそれと同じくらいの強さの身体活動を、1日40分以上(1日約6,000歩以上に相当) |
| 筋力 トレーニング | 週2〜3日(下の「いろいろな要素の運動」に含めてもよい) |
| いろいろな 要素の運動 | 筋力・バランス・柔軟性など、いろいろな要素を含む運動を週3日以上 |
| 座りすぎ | 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないようにする。立つのが難しい方も、じっとしている時間が長くなりすぎないよう、少しでも体を動かす |
※ 「身体活動」は、運動だけでなく、家事や買い物などの生活の動きも含みます。6,000歩は、40分の歩行(約4,000歩)と、家事などの軽い動き(約2,000歩)をあわせた目安です。
「いろいろな要素の運動」には、体操やダンス、ラジオ体操、ヨガなどの、いろいろな動きをともなう運動が含まれます。ガイドの表では、体操の強さは、家で行う軽い〜中くらいの体操が3.5メッツ、座って行うラジオ体操が2.8メッツです。座って行う体操は「歩行と同じくらいの強さ(3メッツ以上)」に届かないこともありますが、座りっぱなしを減らし、少しでも体を動かすという目安にかないます。
ガイドでは、全体の考え方として「個人差を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む」「今よりも少しでも多く身体を動かす」ことが挙げられています。目安に届かない方は、まず今より10分多く体を動かすことから始めてください(ガイドでは「プラス・テン」と呼んでいます)。
3|動画といっしょに:東急ウェルネス健康体操
東急ウェルネスでは、東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座の安保雅博主任教授が監修したオリジナルの体操「東急ウェルネス健康体操」を作りました。リハビリテーション医学の専門家が考えた14種類の運動に、頭と体を同時に動かす8つの課題を組み合わせた、約3分45秒の体操です。歌詞には、多摩川、自由が丘、大岡山、旗の台など、東急線の駅と沿線の名所が登場します。
立って行う「立位」と、椅子に座ったまま行う「座位」の2本があります。動きを確かめながら行いたい方には、0.85倍の速さの「ゆっくり版」もあります。
-
座位|椅子に座って行う
-
立位|立って行う
※ 体調に合わせて、無理のない範囲で行ってください。痛み、息苦しさ、めまいなど、体調の変化を感じたときは、すぐに中止してください。持病のある方や通院中の方は、医師に相談のうえで行ってください。座位は、キャスターのない安定した椅子で行ってください。
はじめての方や、立って行うのが不安な方は、座位から始めると安心です。慈恵医大との連携については、東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座との連携プログラムでご紹介しています。
4|椅子に座ってできる体操

座ったままでも、足、腕、体幹(おなかや背中)を動かすことができます。立つのが不安な方や、要介護の方でも取り組みやすいのが、椅子の体操のよいところです。自治体の介護予防の体操などで紹介されている、代表的な動きをご紹介します。
はじめる前に、キャスターのない、安定した椅子に、背もたれから少し離れて浅めに座り、両足の裏を床につけます。回数は目安です。きつければ減らしてください。
- 1
足踏み
背すじを伸ばし、腕を振りながら、左右の足を交互に上げ下ろしする。30秒ほどから
- 2
ひざ伸ばし
片方のひざをゆっくり伸ばし、つま先を天井に向けて数秒止め、ゆっくり下ろす。左右10回ずつ
- 3
かかと・つま先上げ
両足のかかとを上げて下ろす。次に、つま先を上げて下ろす。それぞれ10回
- 4
腕の上げ下ろし
両腕を前から頭の上まで、ゆっくり上げて下ろす。肩が痛む方は、上がるところまで。10回
- 5
体のひねり
胸の前で腕を組み、おへそを正面に向けたまま、上半身をゆっくり左右にひねる。左右5回ずつ
- 6
口の体操
「パ・タ・カ・ラ」をはっきり、くり返し発音する。ほおをふくらませる、すぼめる。食事の前に行うことが多い
どの動きも、息を止めずに、声に出して数えながら行うと、自然に呼吸ができます。反動をつけず、ゆっくり動かすのがこつです。
5|立ってできる体操(転倒の予防に)
立って行う体操は、足腰の筋力やバランスを保つのに向いています。日本整形外科学会は、ロコモティブシンドロームの予防のための運動「ロコトレ」として、次の2つを紹介しています。必ず、つかまれる机や椅子のそばで行ってください。
| 体操 | やり方と回数の目安 |
|---|---|
| 片脚立ち | 床につかない程度に片脚を上げて立つ。左右1分間ずつで1セット、1日3セット。支えが必要な方は、机に手や指をついて行う |
| スクワット | 足を肩幅に広げ、お尻を後ろに引くように、2〜3秒かけてひざを曲げ、ゆっくり戻る。5〜6回で1セット、1日3セット。ひざが前に出ないように、ひざは90度を大きく超えないように、息を止めずに。難しい方は、椅子に腰かけ、机に手をついて立ち座りをくり返す |
※ 日本整形外科学会「ロコモオンライン」のロコトレの説明をもとにしています。
転倒は、体の力だけでなく、段差やすべりやすい床、暗い照明、飲んでいる薬など、いろいろな原因が重なって起こります。住まいの環境や薬の見直しも含めた転倒の防ぎ方は、老人ホームのリハビリ(機能訓練)の4章でご説明しています。
6|安全に行うための注意
体操は体にやさしい運動ですが、体調や持病によっては注意が必要です。ガイドでも、特に体の働きが落ちている方は、安全に配慮し、転倒などに注意するとされています。厚生労働省のガイドの参考情報「身体活動・運動を安全に行うためのポイント」などをもとに、次のことに気をつけてください。
- 体調のよくない日は休む。熱がある、体がだるい、睡眠不足、食欲がない、頭痛やめまい、足腰の痛みが強い、少し動いただけで息切れや動悸がする、など。ガイドの参考情報では、こうした確認の項目に1つでもあてはまるときは、無理に運動をせずに休むとされています。
- 血圧を測っている方は、運動の前にも。5分以上安静にしてから測ります。160/100mmHg以上のときは散歩程度の軽い運動まで、180/110mmHg以上のときは運動を控えて休みます。
- 持病がある方は、医師に相談してから。心臓の病気、高血圧、糖尿病、ひざや腰の痛みなどで通院している方は、どのくらい動いてよいかを、かかりつけ医に聞いておく。睡眠薬や血圧の薬など、飲んでいる薬によっては、ふらつきやすくなることもあります。
- 異変があれば、すぐにやめる。胸の痛み、動悸、めまいやふらつき、冷や汗、いつもと違う強い疲れ、関節や筋肉の強い痛みなどを感じたら、ただちに中止し、続くときは受診する。
- 息を止めない、反動をつけない。力を入れるときに息をこらえると、血圧が急に上がりやすくなります。
- 水分をとる。体操の前後に、こまめに水分をとる。長く体を動かすときは、15分に1回程度が目安です。
- 場所と椅子を整える。まわりに物のない、すべりにくい場所で。椅子はキャスターのない安定したものを使い、立って行う体操は、つかまれるものの近くで。
7|続けるコツ
体操は、1回で大きく変わるものではなく、続けることが大切です。続けやすくするための工夫をご紹介します。
- 時間を決める:朝食のあと、テレビ番組の前など、毎日の決まった時間に組み込む。
- 音楽や動画に合わせる:歌や動画があると、回数を数えなくても続けやすくなります。
- 誰かといっしょに:家族や友人と、または地域の「通いの場」や介護予防の教室で。区市町村の高齢者向けの窓口や地域包括支援センターで、近くの体操の場所を教えてもらえます。
- 記録をつける:カレンダーに印をつける、歩数を記録するなど、続けたことが目に見えると励みになります。
- 少しずつ増やす:最初は短い時間から。慣れてきたら、回数や時間を少しずつ増やします。
東急ウェリナケアの3ホームの近くの区でも、オリジナルの体操や、介護予防の体操教室があります。
8|老人ホームの体操と機能訓練

老人ホームでは、体を動かす機会を、毎日の暮らしの中に組み込んでいます。大きく分けると、次の2つがあります。
- みんなで行う体操やレクリエーション:椅子に座って行う体操、飲み込みの体操(嚥下体操)、歌、散歩など。毎日の決まった時間に行うホームが多くあります。
- 個別の機能訓練:機能訓練指導員(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護職員など)が、一人ひとりの体の状態や目標に合わせて計画を立てて行う訓練です。
入居を考えるときは、どんな体操を、いつ、どのくらい行っているか、機能訓練指導員はどの資格の人が何人いるか、要介護の方や車いすの方も参加できるかを、見学のときに聞いてみてください。実際に体操の時間に見学すると、雰囲気がよく分かります。機能訓練のしくみと、入居前に確かめたいことは、老人ホームのリハビリ(機能訓練)にまとめています。
東急ウェリナケアの場合
東急ウェリナケアの旗の台・自由が丘・尾山台の3ホームでは、2026年10月から、東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座の監修・実地指導のもとで、「骨折予防・ADL維持プログラム」を始めました。介護が必要な方の「転倒による骨折・寝たきり化」を防ぐことに特化したプログラムです。
- 毎日の体操:3章でご紹介した「東急ウェルネス健康体操」を、要介護度の高い方でも安全に行えるよう座ったままの形にした座位の体操を、毎日行います。
- ケアへの連携(順次):体操を続ける中で得られる体のデータや日々の観察をもとに、姿勢や生活環境を専門的な見地から評価し、その結果をケアマネジャーや機能訓練指導員に伝えて、ケアに生かしていきます。

このほか、3ホームとも機能訓練指導員が、ご入居者の日常生活の動作の維持・向上を目指して機能訓練を行っています。旗の台では、1日の流れの一例で10:00に体操の時間があり、尾山台では、認知症の予防や身体機能の維持のため、レク体操・嚥下体操を毎日行っています(各ホームのケアのページ・サービスのページ)。機能訓練指導員の資格と人数、機能訓練室は、老人ホームのリハビリ(機能訓練)の「東急ウェリナケアの3ホームの機能訓練」でご覧いただけます。
体操や機能訓練の様子は、見学のときにご覧いただけます。ご相談は、お電話(旗の台 0120-068-109・自由が丘 0120-335-109・尾山台 0120-626-109。いずれも受付10:00〜17:30・無休)か、資料請求・見学予約のフォーム(旗の台・自由が丘・尾山台)から承ります。3ホームの違いは3ホームの比較でご覧いただけます。
よくあるご質問
Q高齢者は、1日にどのくらい体を動かせばよいですか。
A厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、歩行またはそれと同じくらいの強さの身体活動を1日40分以上(1日約6,000歩以上に相当)が目安とされています。運動だけでなく、家事や買い物などの生活の動きも含みます。届かない方は、今より10分多く体を動かすことから始めてください。
Q椅子に座ったままの体操でも、意味はありますか。
Aあります。座ったままでも、足、腕、おなかや背中の筋肉を動かせます。国のガイドでも、立つのが難しい方も含めて、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう、少しでも体を動かすことがすすめられています。立って行うのが不安な方は、椅子の体操から始めてください。
Q体操は、毎日したほうがよいですか。
A体を動かすこと自体は、毎日の習慣にするのがおすすめです。国のガイドでは、筋力・バランス・柔軟性などを組み合わせた運動を週3日以上、筋力トレーニングを週2〜3日が目安とされています。疲れが残る日や体調のよくない日は、休んでかまいません。
Qひざや腰が痛いときは、体操をしてもよいですか。
A痛みが強くなる動きは避け、痛くない範囲で行ってください。通院している方は、どの動きならしてよいかを、かかりつけ医に相談してから始めると安心です。体操の途中で痛みが出たときは、すぐに中止してください。
Q要介護の人や、車いすの人でも体操はできますか。
A体の状態に合わせれば、多くの方が取り組めます。椅子や車いすに座ったまま、腕や足首を動かす、口の体操をするなど、できる動きから始めます。どこまで動いてよいかは、主治医やケアマネジャー、機能訓練指導員に相談してください。
Qフレイルとは何ですか。
A年をとって、体の力や心の働き、人とのつながりが弱くなり、介護が必要な状態や病気になりやすくなっている状態のことです。日本老年医学会は、適切な対応によって健康な状態に戻りうる状態としています。体操などで体を動かすことは、そのためにできることのひとつです。
Q東急ウェルネス健康体操とは、どんな体操ですか。
A東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座の安保雅博主任教授が監修した、東急ウェルネスのオリジナルの体操です。14種類の運動に、頭と体を同時に動かす8つの課題を組み合わせています。立って行う「立位」と、椅子に座って行う「座位」があり、それぞれ0.85倍の速さの「ゆっくり版」もYouTubeでご覧いただけます。
Q老人ホームでは、どんな体操をしていますか。
A椅子に座って行う体操、飲み込みの体操(嚥下体操)、歌や音楽に合わせた体操などを、毎日の決まった時間に行うホームが多くあります。個別の機能訓練とは別に行うことが多いので、どちらも見学のときに確かめてみてください。東急ウェリナケアの3ホームでは、座位の「東急ウェルネス健康体操」を毎日行っています。
出典と確認日
この記事の内容は、2026年10月27日に、次の資料で確認しました。
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(令和6年1月):推奨事項(高齢者版)、本編(生活活動・運動のメッツ表)、参考情報「筋力トレーニングについて」「身体活動・運動を安全に行うためのポイント」
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」(2026年7月15日公表。Ⅳ 介護の状況、統計表 第12表)
- 厚生労働省「令和7(2025)年 人口動態統計(確定数)」(2026年9月30日公表)と、政府統計の総合窓口(e-Stat)人口動態調査 上巻 5-31(不慮の事故による死因別・年齢別の死亡数。65歳以上は「65〜79歳」と「80歳以上」を編集部で合計)
- 東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」(令和6年中)
- 日本老年医学会「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」(2014年。厚生労働省の検討会資料に掲載の写し)、日本サルコペニア・フレイル学会、日本整形外科学会「ロコモONLINE」(ロコトレ)
- 大田区・品川区・目黒区・世田谷区の介護予防の体操のページ(7章のリンク先)
- 東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座との連携プログラム(東急ウェリナ・東急ウェリナケア)、YouTube「東急ウェルネス健康体操」(立位・座位・立位 ゆっくり版・座位 ゆっくり版)
- 東急ウェリナケア 各ホームのケアのページ(旗の台・自由が丘・尾山台)・サービスのページ(尾山台)




